2012年12月20日木曜日

<体操>してますか?その2

俳優にとってからだは唯一無二の楽器です。
取り替えのきかない、死ぬまで付き合っていく商売道具ですから
日々自分のからだと向きあい、その声を聞き
いたわり整えるのは当然のことです。

わたしが見てきた限り
長く活躍されている俳優さん
魅力ある演技をされる俳優さん(...これはわたしの主観ですが)
着々と伸びていかれる俳優さんは
意識的かそうでないかに関わらず
生活の中に<体操>を取り入れていらっしゃいます。

...以前、こんなことがありました。

「毎朝起きたら必ず体操と瞑想をされる」という
立派なキャリアをお持ちの先輩俳優さんと遊びに行った時のことです。

若手も含め、たくさんの俳優仲間と
山奥のペンションを貸し切り、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ
その先輩も大盛り上がりで楽しい宴となりました。
みんな酔いつぶれて結局あちらこちらに雑魚寝となり
わたしも、後で聞けば大いびきをかいて、早々に酔いつぶれていたそうです。

朝になり、尿意を催したわたしは
朦朧としながらトイレに向かおうと起き上がってみると
ふと、ペンションのベランダで人の動く気配が・・・
そう、その先輩、いつもの体操をしていたんです。
昨夜悪ふざけした動物の着ぐるみを着たままで(笑)

撃沈した数多の若手俳優が横たわる向こうで
ひとり体操をするベテラン俳優の姿は今でも忘れられません。
「ああ、長くやっていくってこういうことなんだなあ」と
わたしの二日酔いの頭にしっかりと叩き込まれたエピソードです。

その方曰く
「毎日歯磨かないとキモチ悪いだろ。体操も同じ・・・」
・・・だそうです。

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体操は出来るだけ意識的に毎日やることを若い俳優さんには勧めます。
自分で決めた、少し短めのメニューを
毎日、できれば同じ時間帯に、かかさずやることです。

毎日やることには理由があります。

毎日同じ時間に同じことをすると
自分の体が「毎日なにかしら違う」
ということにだんだんと気づきはじめます。

その「なんか違う」センサーが磨かれることは
演技の繊細さにもつながります。
そして、その違いに気づきながらも
「いつもと同じことをする」ことがとても大切です。

ただし、その違いに、調子いいとか悪いとかの判断を下し
いちいち一喜一憂してしまうのは逆効果です。
これは絶対しないでください。
(でも、ほぼ100%の人がやりますが(苦笑))

感覚的な差異に気づいていながらも
平静さを持って、その感覚に執着や嫌悪をせず
ひたすら、やることをやる。


感覚には留まらず、振り返りもしません。
もう、これだけでも、演技においての大変有効なトレーニングになります。

同じ演技でも、やるたびに俳優が感じる<感覚>は変わりますからね。
そして俳優はその<感覚>に振り回され
<やること>・・・すなわち<演技>をぶれさせはじめるのです。

※ このとき、わたし的には「鍛える」ための体操はあまりオススメしません。出来るだけ「ほどく」とか「ゆるめる」ということばで<体操>することをオススメ します。時には「いたわる」や「ねぎらう」もいいでしょう。「わたしの弱い部分を鍛える」とか「オレの堅いからだを伸ばす」っていうことばでする<体操> はわたしの経験では効果が薄く、下手をすると逆効果です。

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多少ハイレベルな話になりますが

この点に関しては、特に舞台俳優さん、それもロングランをされる俳優さんには
大変関心のあるポイントだと思います。

実は、アレクサンダーテクニックの7つの基本概念の一つにも
これにたいへん良く似たテーマが含まれています。
「あてにならない感覚評価」というやつです。
これはわたしが個人的にも大変関心を持っている部分です。

俳優がアレクサンダーテクニックのレッスンを受け
そのテクニックを自らのパフォーマンスに取り入れ使い続けることで
ロングランにおける安定したパフォーマンスを得ることは十分に期待できます。


要は「打率が上がる」ということです。
すでに八割打てる人も限りなく十割に近づいていくことでしょう。

もちろんある程度の経験値をベースにした深い洞察は要りますが
「1ステージも落とせない」舞台俳優には
その探究をするだけの十分なモチベーションはあるはずです。

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さて、体操の話でした。

俳優がアレクサンダーテクニックのレッスンでまず試してみることに
わたしは、俳優自身が普段いつもやっている体操をおすすめします。

最初はひとつのメニューだけでも十分でしょう。
膝の屈伸運動をやるだけでもたくさんの・・・
あまりにもたくさんのことを学べます。

人によっては、その情報量...その繊細さについていけず
「こんな面倒くさいことはやってられねえ」
と開き直るお方もいるかもしれません。

・・・無理もありません。(笑)

だからレッスンを受ける時には必ず望みを持っていて欲しいのです。

「この体操の時のこのうごきがしずらい」
「なんかこのうごきをするときだけ息が苦しく感じる」
「このヨガのポーズでもっとゆるみたい」
「なんかここでいっつもぐらぐらするからもっと安定したい」

きっと素晴らしい学びが得られることでしょう。

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