2014年6月25日水曜日

俳優が感覚を頼りに演技してはいけない理由

俳優が感覚を頼りに演技してはいけない理由その1

…感覚はいつも変化し続けている、うつろいやすいものです。そのような当てにならないものを頼りにすると、いつまでも目標に到達することはできません。

俳優が感覚を頼りに演技してはいけない理由その2

…感覚はそれ自体すでに過去のものです。過去を頼りにしながら、今をフルに生きることはできません。感覚を頼りにすると、その間は「いつかのパフォーマンス」をしようとしてる人になります。

俳優が感覚を頼りに演技してはいけない理由その3

…感覚をまさぐっている間は、周囲への意識が消えます。だからオーディエンスを無視したパフォーマンスになってしまうでしょう。それはもう、そもそもパフォーマンスではありません。ただの1人遊びです。

俳優が感覚を頼りに演技してはいけない理由その4

…感覚を探そうとすると、過去に感じたことのあることしかキャッチできないので、今の 感覚を取り逃がします。パフォーマンスを続ける上で必要な(本来の)感覚情報を受け取れなくなり、トンチンカンなパフォーマンスになります。

俳優が感覚を頼りに演技してはいけない理由その5

…感覚をパフォーマンスの指示に使うのと、思考を指示に使うのとでは、圧倒的に思考の 方がスピードが速いです。パフォーマンスの最中に使うなら思考がいいでしょう。感覚を使おうとすれば、間の抜けたものになるでしょう。


+++++++++++++++++++

アレクサンダー・テクニックの原理のなかに
「感覚評価は当てにならない」
というものがあります。

これは決して感覚自体が当てにならないと言っているわけではありませんが
テクニークを学び始めたとき
それまであまり上手でない自分の使いかたをして来た人が
これまでに慣れ親しんだものではない体験をレッスンでした時に
しばしば「これは間違っている」「変な感じだ」と判断してしまうことがあるのです。

例えば
極端に首を突き出し背を丸めていた人が
レッスンによって頭と脊椎のバランスが良くなった場合
「いつもより後ろに倒れているようで変だ」と感じる場合があります。

例えば
極端に胸を突き出し腰を反らせていた人が
レッスンによって頭と脊椎のバランスが良くなった場合
「いつもより前屈みになっているようで変だ」と感じる場合があります。

どちらも同じように頭と脊椎がバランスよくいられたとしても
人によって、またはそれまでの馴染み深いものによって
「感覚」は変わるのです。

感覚は「差異」から発します。
そして人は慣れたものを「正しい」と思います。
もちろんレッスンを重ねることで、いずれは
「当てになる感覚」を身につけることは一つの目標になるでしょう。

俳優さんの場合は
自分の感覚評価と他人(お客さんやスタッフさん)の評価が異なることを
経験した人は少なくないでしょう。

感覚は次なる演技への大切な情報の一つではあります。
でも、次なる演技をその感覚を頼りにスタートさせることは不可能なんです。

ある意味当たり前のことを申しあげているのですが
どうしてもこの罠に俳優はひっかかりやすいので
アレクサンダーテクニックのお話と一緒にご紹介しておきました。

0 件のコメント:

コメントを投稿